柿埜真吾メルマガ:第74回 〈3月の日銀金融政策決定会合について(1) 3月引き締めに合理的根拠はあったか〉

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◆◆救国シンクタンクメールマガジン 2024/03/24号◆◆

3月19日、日本銀行は金融政策決定会合においてマイナス金利の解除を決定した。今回の決定ではマイナス金利解除に加え、YCCとマネタリーベースのオーバーシュート型コミットメントも撤廃され、ETFやJ-REITの買い入れも終了が決まった。当面はこれまでと概ね同程度の金額で長期国債の買入れを継続するので、金利や資産価格に大きな影響は出ていないが、国債購入額は次第に縮小されていくだろう。既に3月に入ってリークに基づくとしか思えない報道が相次いでいたのでマイナス金利修了は織り込み済みだったが、黒田前総裁以来導入されてきた非伝統的金融政策は量的要素を除き廃止されたわけである。

日銀は2%目標達成によほど自信をもっているらしく、公表文でも「2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。これまでの「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みおよびマイナス金利政策は、その役割を果たしたと考えている」と高らかに宣言している。

今回の決定をどう評価すべきだろうか。結論から言えば、今回の緩和終了の決定は、致命的失敗ではないものの、敢えて今やる必要がない不必要なリスクをとったギャンブルであり、日銀の姿勢は極めて問題が多いものである。無論、金融緩和はいつまでも続けるべきものではなく、物価と景気に応じて変更するのは当然だが、現状は政策変更を正当化するような状況とは言えない。日銀の想定する楽観的シナリオ通りに事態が進む可能性はあるにはあるが、わざわざ3月に今回のような冒険をするべきではなかったと考える。

まず、景気に関していえば、明らかに景気は減速している。2023年10-12月のGDPは第一次速報値ではマイナスだったのが第二次速報では上方修正されてプラス0.1%になったが、弱い数字であることに変わりはなく、依然として2023年4-6月のピークを下回っており、GDPギャップもマイナスが続いている。特に弱いのは相変わらず消費で、実質民間最終消費支出は3四半期連続マイナス成長となっており、足元の数字もよくない。日銀は今回の公表文で個人消費について「底堅く推移している」と述べているが、これは全く数字を無視した根拠なき楽観というほかない。1-3月のGDPは能登半島地震と自動車の検査不正問題による出荷停止の影響でマイナス成長に陥ることがほぼ確実である。今年の成長率はせいぜい良くて0%台だが、現状は景気後退の瀬戸際である。こんな時期に敢えて利上げするのは物価が急騰するリスクがあるならばともかく理解しがたい決定である。

その肝心の物価はどうかと言えば‥‥

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