「自主独立のための選択肢」No.194 準同盟国を増やしていく

投稿 [ Blog ]

サムネイル:海上自衛隊オフィシャルサイトより

 

<本文>

◆◆救国シンクタンクメールマガジン 24/05/22号◆◆

情報史学研究家の江崎道朗です。

今回のテーマは「フィリピンとの防衛協力」です。

 

フィリピンと円滑化協定を結ぶという話が出ています。

訓練円滑化へ協定交渉加速 日比防衛相が会談 自由で開かれたインド太平洋、改めて確認
木原稔防衛相は3日(日本時間4日)、米ハワイでフィリピンのテオドロ国防相と会談した。自衛隊とフィリピン軍部隊の往来と共同訓練実施をスムーズにする「円滑化協定(…

 

これまで日本は、オーストラリア、イギリスと「円滑化協定」を結んでいますが、これは日本にとって準同盟国を増やす、という意味合いがあります。

 

戦後長らく日本は、アメリカと同盟関係を結び、安全保障についてはアメリカに依存してきました。

しかし、アメリカ自身が「世界の警察官」であることをやめる動きがあることや中国の軍事的台頭という新しい国際情勢を受けて、第二次安倍政権は、それまでの対米依存、一国平和主義を大きく転換し、積極的平和主義のもと、アメリカ以外の国とも積極的な安全保障協力体制を拡充する対外戦略を採用しました。

 

そのシンボルが2013年に策定した国家安全保障戦略2013です。

《国際政治経済の主要プレーヤーとして、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していく。このことこそが、我が国が掲げるべき国家安全保障の基本理念である。》

 

安全保障面では、一国平和主義を掲げ、閉じこもってきた我が国でしたが、今後は、《我が国の安全》だけでなく、《アジア太平洋地域の平和と安定を実現》していく、としたのです。

 

そのうえで具体的には《特にペルシャ湾及びホルムズ海峡、紅海及びアデン湾からインド洋、マラッカ海峡、南シナ海を経て我が国近海に至るシーレーンは、資源・エネルギーの多くを中東地域からの海上輸送に依存している我が国にとって重要であることから、これらのシーレーン沿岸国等の海上保安能力の向上を支援するとともに、我が国と戦略的利害を共有するパートナーとの協力関係を強化する》として、シーレーンの関係国との安全保障面での強化に取り組むことを決定しました。

 

この新たな国家安全保障戦略のもとで日本は、フィリピンとの安全保障面での強化を図ってきました。その経緯について、東洋大学国際学部国際地域学科准教授の山崎周さんが「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想下の日本の対フィリピン防衛協力 :日比関係の新章としての準同盟の萌芽」という論考を防衛研究所の月刊誌『安全保障戦略研究』(第4巻第2号、2024年3月)に寄せています。

https://www.nids.mod.go.jp/publication/security/pdf/2024/202403_10.pdf

 

戦後の対アジア関係は、経済と外交に限定され、安全保障面での関係はほとんどありませんでした。よって日本の国際政治学者も、アジアとの関係は専ら外交と経済だけでした。

しかし、第二次安倍政権が積極的平和主義に基づいてアジアとの「安全保障面」での関係強化に取り組むようになったことから、日本の政治学者の中にも、アジアと日本の安全保障協力について研究するものが現れ、防衛研究所の会報に原稿を書くようになったということです。

 

国策が明確になれば、それに伴ってその専門家も現れてくる、というわけです。

 

では、以下、山崎准教授の論考を引用しながら、フィリピンとの円滑化協定に向けた動きの背景について解説していきましょう。

 

まず、フィリピンとの関係ですが、第二次安倍政権の「自由で開かれたインド太平洋構想」のもとで防衛協力は強化されてきました。

《FOIPの実現を目指す日本はインド太平洋地域において積極的に活動しており、東南アジア諸国との防衛協力を進めている。その中でも、南シナ海問題が象徴する中国による海洋進出や米中対立は日本とフィリピンの間での防衛協力を促す要因になっていることから、日本は対比関係に傾注してきたが、中国もその動向を警戒している。日比間では準同盟(quasi-alliance)が構築されつつあり、米中対立やウクライナ戦争といった国際秩序の変動に関わる大局的な出来事が続発していることから、今後もその動きが加速していくと見込まれる》

 

こうした全体像を踏まえて、山崎さんはこう指摘しています。

《米中間での角逐が激化すればするほど日本の国際的な重要性や影響力を押し上げる構造が浮き彫りになっているだけではなく、海洋を地政学的な重点に据えるFOIPは、混迷を深める国際秩序と地域秩序の中における日本の主導性を補強する要素でもある》

 

米中対立はリスクであるとともに、チャンスなのです。米中対立が激化しているからこそ、日本主導の自由で開かれたインド太平洋が重要になってきているわけです。

 

そして、この自由で開かれたインド太平洋は、外交と経済がまず基本になっています。

《インド太平洋地域における日本の主導性が顕著である領域としては、通商や金融といった経済分野がある。2017年にドナルド・J・トランプ(Donald J. Trump)政権下の米国が離脱した環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の交渉を日本が主導したこともあり、その翌年から参加国間で同協定の発効が逐次始まった。それだけではなく、最終的に加盟には至らなかったもののインドに地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に参加するように働きかける等、日本はインド太平洋地域における地経学戦略を推進してきた。その上、インド太平洋地域のインフラストラクチャー、供給網(supply chain)、金融面での地域協力でも日本は各国から幅広い支持を集めている》

 

こうした外交、経済を基本にしつつ、日本は防衛分野の協力を進めてきました。

《インド太平洋地域での日本の主導性が著しいのは防衛分野についても同様であり、中でもFOIPの旗印の下で進む東南アジア各国との協力が目を引く。日本は東南アジア諸国との防衛や安全保障分野での協力に1990年代前半から着手し始めたが、2010年代半ば以降はFOIPの一環として政策を実践している。米中対立や南シナ海問題が先鋭化する環境下、中国を牽制する思惑から日本はフィリピン、インドネシア、ベトナム、マレーシアといった東南アジアの中でも南シナ海と接する域内諸国との防衛面での協力を深めており、この先もその施策の継続が予想される》

 

外交か軍事かという二項対立ではなく、外交、経済と軍事を連動させてアジア諸国との関係を強化してきた点が、これまでの日本とは全く異なる点です。

 

一方、フィリピン側も中国の脅威に対抗すべく、日本との関係強化を求め、それにこたえて第二次安倍政権は、巡視船などの供与を進めてきました。

《ドゥテルテは大統領への就任当初から日本との海洋安全保障協力に乗り出し、2016年9月の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合中の日比首脳会談での日本からフィリピンへの大型巡視船2隻の供与や海上自衛隊の練習機TC-90のフィリピン海軍への移転の合意に加え、翌月のドゥテルテ訪日によって対日関係を重んじる姿勢が明確になったように21、フィリピンは日本との関係をテコにして南シナ海問題で中国に対処しようとしてきたのである》

 

しかも日本の「自由で開かれたインド太平洋」構想は、一対一の構想ではなく、多国間協力の枠組みです。その結果‥‥

 

 

―――――――――――――――

今回のメルマガでは、江崎道朗研究員が準同盟国を増やしていくためのフィリピンとの防衛協力について詳しく解説しています。

ぜひ、会員向けメルマガで全文をご確認ください。

 

ご入会いただくとメルマガをお届け致します。

貴重な情報満載の過去のメルマガもすべてお読み頂けます。

【会員ページ】 https://kyuukoku.com/account/

【ご入会案内】 https://kyuukoku.com/support/

 

救国シンクタンクの理念に賛同し、活動にご協力いただける方は、ご入会の手続きをお願い致します。

(文責:事務局)

 

 

********************

 

《第6回 救国シンクタンクセミナー自治体経営研究会》

◆開催日時:令和6年6月22日(土)14:00~17:30(13:30受付開始)

【場 所】TKP九段下神保町ビジネスセンター 東京都千代田区神田神保町3-4柳川ビル

【テーマ・講 師】

「『コロナ禍を記録する』出版記念緊急セミナー」

~公文書管理の基本と今すぐ誰でも使えるデジタル時代の仕事術~

倉山 満 救国シンクタンク所長・理事長

【プログラム】

受 付:13:30

開 会:14:00 挨拶、事務連絡

・活動報告:地方議員の活動成果報告

・第一部 : 理論編 文書の整理術~歴史学、マネージメント、インテリジェンス~

・休 憩

・活動報告:地方議員の活動成果報告

・第二部 :実践編 住民を守り政策検証を可能にするアーカイブ術

・閉 会 :17:30

※セミナーの後に懇親会を予定しております。別途お申込みとなります。

◆参加申込(Peatixにて受付いたします)

お申込みURL:http://ptix.at/ckGCHD

・地方自治体【首長・議員】(参加費20,000円)

・立候補予定者、一般アクティビスト(参加費5,000円)

 

本セミナーは、地方自治体の首長・議員・立候補予定者の方々を対象にしておりますが、アクティビスト志望の会員様やそれ以外の一般の方もご参加いただけます。

減税や規制改革、事務事業評価、安全保障などに取り組んでいる「首長・地方議員・立候補予定者」をご存じの方は、ぜひこのセミナーをご紹介ください。

 

***********************

 

救国シンクタンク第8回フォーラム 11月23日

テーマ:「米大統領選後の世界」

 

【一般有料チケット】5500円

お申込みURL:https://peatix.com/event/3908203

チケットのお申込みはお早めに!

 

********************

 

《救国シンクタンク翻訳叢書完成!》

【 Leave US Alone: 減税と規制緩和、アメリカ保守革命の教典】

監修:渡瀬裕哉(救国シンクタンク研究員)

全米で最も影響力のある政治戦略家の一人でもあるグローバー・ノーキスト氏が、保守派に向けた大胆なマニフェストとビジョンを提示する。

経済、人口統計、政治動向を通じて、アメリカ政治がこれまでどこにあったのか、どのように変化していったのか。本書『Leave Us Alone』は、アメリカ政治をより深く理解するための必読の書である。

www.amazon.co.jp/dp/4434328867

 

********************

 

《救国シンクタンク叢書 第5弾『皇位継承問題』》

Amazon.co.jp: 救国シンクタンク叢書 皇位継承問題 : 救国シンクタンク: 本
Amazon.co.jp: 救国シンクタンク叢書 皇位継承問題 : 救国シンクタンク: 本

救国シンクタンク“日本の未来を考える”シリーズの第五弾。第一部では「皇位継承問題とは何か」を學館大学 現代日本社会学部教授、新田均氏が、「皇位継承問題と政治」については産経新聞社 論説委員長、榊原智氏が、「後花園天皇と伏見宮家」というテーマで国際日本文化研究センター 名誉教授渡今谷明氏が、「旧皇族の男系男子孫の皇籍取得は憲法第十四条違反なのか」と題して弁護士、山本直道氏が、そして「秋篠宮家の現在と未来」を皇室評論家の髙清水有子氏がそれぞれの知見を持って論じる。第二部では倉山満氏をモデレーターに、それらの専門家が皇位継承問題について白熱したクロストークセッションを展開する。

皇位継承問題について、専門家たちが描き出す今を表した必読の書。

《令和5年7月30日(日)第7回フォーラム「皇位継承問題」》

救国シンクタンク第7回フォーラム「皇位継承問題」ダイジェスト

 

********************

 

《米国共和党保守派【翻訳叢書プロジェクト】出版費用支援のお願い》

救国シンクタンクではこのたび、ニュート・ギングリッチ元連邦下院議長の最新著作

『Defeating Big Government Socialism: Saving America’s Future』と、グローバー・ノーキスト全米税制改革協議会議長の著作『Leave Us Alone: Getting the Government’s Hands Off Our Money, Our Guns, Our Lives』の〈救国シンクタンク叢書〉としての翻訳本出版にあたり、会員の皆様にご寄付をお願いしたところ、大変多くのご支援を賜ることができました。誠にありがとうございます。心より感謝申し上げます。

【重要】翻訳プロジェクトに関する報告・自治体経営セミナー開催決定!【救国シンクタンク】https://youtu.be/1TpNv8USXkg

翻訳叢書プロジェクトにご支援いただく際は、ぜひ事務局までご連絡をお願い致します。

◆お問い合わせ先:info@kyuukoku.com

 

********************

 

《救国シンクタンク叢書 第4弾『大国のハイブリッドストラグルII: 大国の衰退と台頭がもたらす地域紛争』》

『大国のハイブリッドストラグルII: 大国の衰退と台頭がもたらす地域紛争』(2023年)

Amazon.co.jp: 救国シンクタンク叢書 大国のハイブリッドストラグルII: 大国の衰退と台頭がもたらす地域紛争 : 救国シンクタンク: 本
Amazon.co.jp: 救国シンクタンク叢書 大国のハイブリッドストラグルII: 大国の衰退と台頭がもたらす地域紛争 : 救国シンクタンク: 本

救国シンクタンク第6回フォーラム「大国のハイブリッドストラグル2023新春 」

- YouTube
YouTube でお気に入りの動画や音楽を楽しみ、オリジナルのコンテンツをアップロードして友だちや家族、世界中の人たちと共有しましょう。

 

********************

 

《救国シンクタンク叢書 第3弾『なぜレジ袋は「有料化」されたのか』》

『なぜレジ袋は「有料化」されたのか』(2023年)

救国シンクタンク叢書 なぜレジ袋は「有料化」されたのか
「ほぼ毎日のペースで新たに増加する規制は、日本経済に目に見えないコストを課しています。それらの累計額は計り知れない規模になっていますが、日本政府はその全容を把握することなく、今日も制御基盤が壊れたマシーンのように新たな規制を作り続けています」。本書はそのような規制のうち、誰もが知っている「レジ袋の有料化」という規制につ...

いよいよ新発売!レジ袋有料化「義務化」は嘘だった!? 救国シンクタンク叢書『なぜレジ袋は「有料化」されたのか』 内藤陽介 渡瀬裕哉

 

********************

 

会員の皆様は、公式サイトの会員ページにて、過去のメルマガ配信履歴をいつでもお読み頂けます。

【会員ページ】 https://kyuukoku.com/account/

 

(文責:事務局)

 

 

 

 

 

タイトルとURLをコピーしました