◆◆救国シンクタンクメールマガジン 2024/03/17号◆◆
「新古典派」という言葉が大した意味のないレッテルであることは、以前のメルマガでもお伝えしたが、今回はその「新古典派」という言葉の意味について、やや衒学的な内容になるかもしれないが、もう少し補足しておきたい。一言で先に結論を言うなら、「新古典派」云々という言葉を見かけたら疑ってかかるのが賢明だということである。
元々、経済学の「古典派」という言い回しはマルクスが作った一種の悪口のレッテルである。「新古典派」というのも異端派の経済学者ヴェブレンが1870年代以降の主流派経済学の潮流を批判するために作った大雑把なレッテルである。歴史的な意味の「新古典派」は、価格を労働価値説ではなく、限界原理で説明する1870年代以降の主流派経済学者を指す。「限界」というのは、「追加的に」という意味の経済学の専門用語である。財の価格はそれに費やした労働時間ではなく、生産者の限界費用(追加的に1単位その財を供給するのにかかる費用)と消費者の限界効用(追加的に一単位消費を増やしたときに得られる効用)で決まるという現在の価格理論は1870年代に確立されたが、この理論を提唱したのがカール・メンガー(オーストリア学派の創始者)、ウィリアム・スタンレー・ジェボンズ、レオン・ワルラス(ローザンヌ学派の創始者)、アルフレッド・マーシャル(ケンブリッジ学派の創始者)らである。歴史的な意味の「新古典派」には通常、ケンブリッジ学派、ローザンヌ学派、オーストリア学派などが含まれるが、これらの学派は限界原理を使うこと以外はそもそもさほど似ていなかった。例えば、オーストリア学派は数理経済学の意義に否定的な自由主義の色彩が強いグループだったのに対し、ローザンヌ学派は数理経済学の発展に努め、社会主義に好意的な学者も多かった。ケンブリッジ学派は部分均衡分析を重視したが、ローザンヌ学派は一般均衡分析を重視し、オーストリア学派はそもそも均衡分析に懐疑的だった。要するに「新古典派」というのは、様々な主流派のグループを異端派が遠くから見て適当にひとくくりにして呼んだレッテルに過ぎないのである。それが何なのかさえ明確でないので、新古典派に対する批判はどうしても曖昧模糊としたいい加減なものにならざるを得ない。
ちなみに、現代オーストリア学派の経済学者はケインズ革命以降主流派から外れてしまい、今では「新古典派」(=主流派)を仇敵のように見なしているが、歴史的には彼らも「新古典派」と呼ばれてきたし、一部の学者は今もそう呼んでいる。だから、「新古典派」といっても、何が「新古典派」なのかさえ実は明確に定まっていないのである。
このように最初から「新古典派」の中身は怪しかったが‥‥
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