◆◆救国シンクタンクメールマガジン 23/3/5号◆◆
前回のメルマガでは、植田氏の衆議院での所信聴取についてお話しした。今回は、植田氏の参議院での所信聴取について触れた上で、日銀副総裁候補の所信聴取についてもコメントする。参議院の所信聴取では、議員からの質問は比較的レベルが高いものが多かったが、中でも圧巻だったのは、自民党の世耕議員の質疑である。
◆2%目標堅持を明言しない植田氏には失望
世耕議員はまず、アベノミクスの評価を問うた。植田氏の回答はデフレではない状況を作り出し、企業収益拡大やベースアップも実現したという穏当なものだったが、世耕氏はさらにアベノミクスを継承していくかと追及した。植田氏は、政治的立場を表明することになりかねないという躊躇からか、歯切れは悪かったが、2%目標達成まで「現在の路線を継承するということが適切である」と答えた。国会の場で共同声明に沿って2%目標を目指す金融政策を「踏襲する」と明言したのだから、約束はもちろん守るつもりなのだと信じたい。
続いて、世耕議員は、2%インフレ目標に関する植田氏の見解を問いただした。植田氏の答えは、中には適切なものもあったが、全般的には失望するしかないものだった。例えば、黒田日銀が2016年に導入したオーバーシュート型コミットメントについては「当面続けるべき」としながらも、「結果的にインフレ率がインフレ目標を大幅に上回ってしまうリスクがないかどうかは、常に注意して政策を運営していくべき」で副作用に注意したいという答えだった。オーバーシュート型コミットメントは、デフレ脱却を確実にするために早期の引き締めを避け、一時的に2%を超えるインフレを容認する手法である。これは主流派経済学においてデフレ脱却の標準的な処方箋である。「インフレ目標を大幅に上回ってしまうリスク」を避けるには目標とする物価水準を明確にすることが必要なだけであり、これは筆者が常々提案している物価水準目標を導入することで解決可能である。単に「副作用」を心配するというだけでは何の解決にもならない。副作用を指摘し、明確な方針を示すことを避ける植田氏の姿勢は、中央銀行の責任を果たすために必要であれば躊躇なく緩和することを明言している黒田総裁とは極めて対照的である。
何よりも残念だったのは植田氏が
《中略》
◆注目すべき内田副総裁候補の所信表明
植田氏が強い意見を持たない調整型の人物であることを考えると、2人の副総裁、特に日銀生え抜きの内田氏の役割は非常に重要になる。あまり注目されていないが、日銀副総裁候補に指名された内田真一日銀理事の国会質疑は…
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今回のメルマガは、2月27日と28日に参議院議院運営委員会にて行われた、日銀正副総裁候補3名の所信聴取と質疑内容について、経済学者の柿埜真吾先生が解説してます。
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